マツダ交通の見たまま

主に大阪シティバスの小ネタや歴史をディープに掘り下げる考察系ブログです。

大阪市営バスにかつて存在した『グリーンエース』とは?

こんにちは😃

ところで都市新バスシステム』はご存知ですか?

都市新バスシステムとは、都市部においての幹線道路を走る主要なバス路線の利便性を向上させるために従来のバスの運行システムを見直して再整備させることです。

具体的には、道路混雑や停留所前での路駐を抑制するために専用レーンを設置することや「バスがいつ来るのか?」をバス停が利用者に知らせるバスロケーションシステムの導入などが挙げられます。

東京都では都営バスや東急バス、愛知県では名古屋市営バス名鉄バスなどがこのシステムを導入していました。

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大阪市においても大阪市営バス(現:大阪シティバス)が『グリーンエース』としてこのシステムを導入し、主要なバス路線の利便性向上を図っていました。今回はこの『グリーンエース』はどういうものであったのかを紹介していきたいと思います。

グリーンエース導入までの背景

グリーンエースⅠの導入まで

グリーンエース導入直前(1985年)には乗客数が昭和39年の119万人の約3分の1にまで減少していました。その要因としては地下鉄などの路線開業により乗客数減ったということもありますが、自動車が急増したことで幹線道路などで混雑を起こしバスの定時運行が厳しく、しきりに遅れては交通輸送としての信頼を損なってしまったということで本来のバスとしての機能を発揮することが出来なかったことにつながります。

このため、バス路線の利便性を上げるために導入したのが『グリーンエースⅠ』という都市新バスシステムです。

一般的な施策としては、

  • バス専用レーンや優先信号機でスピードアップを図る
  • 冷暖房装置の都市型車両の導入で快適な乗り物にする
  • バスロケーションシステムの導入でバスの接近情報を知らせるとともに運行管理を行う
  • モダンなシェルターを設置し、バス停留所のイメージを一新する

これらを一体化させた施策で再び信頼される市バスとして乗客数増を図るというものでした。

 

グリーンエースは、グリーンの持つ「さわやかな暖かさ(市バスのこころ)」であり、今回の都市新バスシステム導入が復権のエースになるようにとの願いをこめて名付けられました。

第1次の都市新バスシステム導入は1986年(昭和61年)4月1日に主に今里筋を通る杭全(くまた)~守口車庫前間に導入されました。

f:id:Matsuda_KOTU:20211215072839j:image[地下鉄緑橋停留所に止まる幹線35号系統]

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[方向幕(前)]

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[方向幕(横)]

グリーンエース導入系統は幹線35号系統(守口車庫前~杭全)、幹線35A号系統(守口車庫前~地下鉄今里)、幹線85号系統(なんば~杭全)に導入されました。幹線85号系統ではグリーンエース区間に入ると自動的に上の背景がの幕に変わり、区間外になると一般バス路線で走る背景が白い幕になる仕様となっていました。

そのほか設備面では杭全~今市(いまいち)間に優先信号、地下鉄今里~杭全間に専用レーンが設置。グリーンエース内にある停留所はバスロケ化が進み〝バスを待つイライラを少しでも無くすため〟に接近表示器の付いた電照式のバス停のものに取り替えられました。(ただし、バスロケーションシステム導入はこれが初めてではない)

f:id:Matsuda_KOTU:20211216065953j:image[ポール型の電照式標柱に付く接近表示器]

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[シェルター型のバス停に付く接近表示器(現在撤去)]

先程の緑橋に止まるバス車両(いすゞキュービック)には冷・暖房装置が付いてあり、低床かつ広幅扉が採用されています。

 

グリーンエースⅡの導入

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1986年に導入されたグリーンエースⅠはバスのスピードアップと定時運行が図れたことにより1988年(昭和63年)4月27日に大正区内でもグリーンエースⅡとして導入されることになりました。範囲は地下鉄桜川~大運橋・鶴町四丁目間で大正橋~大運橋間を走る大正通は総合交通対策として市バスが路駐車両の影響を受けずスムーズに運行できるように車線構成の見直しを行い、朝ラッシュ時間帯のみだったバス専用レーンが朝5時~深夜1時までと大幅に延長しました。これにより平日の※大正橋発鶴町四丁目方面行きの終発時刻が23時25分より23時59分へ延長することができました。(この見直しで大正橋の折り返しも可能になる)

 

※この他、幹臨71A号系統(戎橋~大正橋経由・鶴町四丁目)の戎橋停留所終発時刻は、23時48分であった。

 

さらに、グリーンエースⅠと同様に風防付きのシェルター型バス停が設置されバス接近表示器も取り付けられました。

f:id:Matsuda_KOTU:20211216072700j:image[シェルター型バス停の接近表示器]

実施系統は幹線70号系統(なんば~鶴町四丁目)、幹線70A号系統(大正橋~西船町)、幹線76号系統(地下鉄住之江公園~九条車庫前)、幹線臨98号系統(新千歳~なんば)などに導入されていました。

また、1992年(平成4年)3月には、なんば~地下鉄桜川間にも都市新バスシステムの実施範囲を広げました。

 

グリーンエース廃止とその後…

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2000年(平成12年)5月20日の九条営業所廃止時にはグリーンエースの緑幕を白幕に統合させたため、緑幕及びグリーンエースの愛称は廃止になりました。

しかし、グリーンエース時代の名残は今もなお残り続けています。大正通のバス専用レーンは現在も残存のほか、特にシェルター型のバス停は主に大正通沿いの停留所で未だ健在です。

f:id:Matsuda_KOTU:20211216132024j:image[大正橋停留所]

f:id:Matsuda_KOTU:20211216132122j:image[鴫野駅前停留所(大阪市営バス時代に撮影、なお大阪シティバス移管後も残存)]

また、大正通沿いにある停留所にはバス接近表示器も当時と型は違いますが、これも残っています。

f:id:Matsuda_KOTU:20211216132317j:image[鶴町四丁目のバス接近表示器(大阪市営バス時代に撮影、なお大阪シティバス移管後も残存)]

 

つまりグリーンエースは路線の種別としては、一般バス路線と比べて主要な幹線道路でのバス路線が交通事情により脅かされていたことから、利便性向上のために優先して対策が行われていた区間ということです。大阪シティバスの路線図には大正区付近を見ると70や71、91号系統など多くの線が連なった部分があり、大正駅(大正橋停留所)以南からは小林・鶴町地区と地下鉄が通らない大正通を走るバス路線が、このグリーンエースⅡという道路の見直しがあったことで利便性が上がり、今もなお残り続けているのでしょう。

そして、今も何らかの形で残り続けています。

 

では👋